平田 治 |
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まず最初に、龍之口と全体の写真を見てみましょう
私が口伝にて断片的に聞く龍之口(古流射法)の外見的特徴として次のことが挙げられます。
現在の射法(私は左右均等射法と呼んでいます。以下、均等射法とします)は簡単に説明すれば的に向かう矢に平行に体を置き開きます。(この時よほど力の偏った置き方をしない限り、日弓連の言う
三重十文字、五重十文字が自然に体に表れます)この状態で押手、勝手ともバランスよく均等に力を加え、引き離すことで的中を得ます。
これに対し龍之口という勝手の形を取る古流射法(私は三角射法と呼んでいます。以下、三角射法とします)では押手と勝手が別々の役割を持っています。
ここで三角射法を分かり易く説明するため、話を少し弓から離れ、日常生活での自然な動きを使って見てみましょう。 まず、壁に体の側面を向けて立ち 片手で壁を押す場合を考えます。この時、下筋を使って素直に押そうとすると、普通、押手の肩は下がり、逆に勝手の肩が上がります。
また、完全な横向きでは十分な力が出ない(もしくは斜めの方が力を入れ易い)こともあり、決して横向きではなく、少し押手の肩を控え、体を斜め正面加減に傾けて押そうとするはずです。
この体勢に弓の弦を引く勝手を付けたもの これがそのまま三角射法だと思います。
偶然か必然かこの壁押しの自然な挙動は、話に聞く三角射法の特徴のそれと合致しています。これが必然とすれば、三角射法とは押手中心の射法という事になると思います。 一方、均等射法でする体勢は弓を引く以外の場合において、どういう状況が一番自然な(力が入れ易い)体勢なのでしょうか? 想像で思いつくところでは、両方から迫る壁を両手で押し開こうとする場合が思い当たります。 この場合、普通、両壁を鉛直に結ぶ線に平行に立ち、胸の中心から左右均等に押し開く。あるいは壁がそれ以上迫らない様に両手を突っ張る様に押そうとすると思います。
これを下筋から行う状態のままで勝手だけを弓の弦を取る様に恰好つけると、これがそのまま均等射法だと思います。言い換えると均等射法は体の中心から両方に伸び開く押し方をする射法と言えるのではないでしょうか。
また、この事を逆手に取ると、均等射法は左右の力のバランスさえ取ることができれば、見た目、力の程度はどうあれ的中可能な射法と言えます。ただ、均等射法は三角射法と異なり、体勢に自由度が高い分、何かしらの縛り(規則)を持たないと亜種を多量に輩出してしまう事になるのが注意点だと思います。(的中だけを意識するならば、均等射法は三重十文字、五重十文字がくずれていてもバランスが取れていればよいとも言えます。しかし、前述と比べ合わせると「素直ではない」と言えるのではないでしょうか。礼法というより実戦用法。基本ではなく応用であると思います) 注意:ここでは日弓連の正射とは何か?を論題にしておりません。あしからずご了承ください。 ともあれ、この2つの射法は、どちらが正しいか?(優秀か?)より、考え方の出発点の違い。と割り切る方が良さそうですね。 【脱線】
では、勝手で引くことを中心に考えた射法もあっていいじゃないか? |
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